約束の時間に着くと、あとは切るだけの状態にすっかり準備が整っていました。今回は、フィリップが作業しやすいようにと、台所で立ってできるように配慮してくださっていました。
最初にNさんが、折り畳んだ蕎麦の切り始め部分で、お手本を見せてくださいました。
「じゃ、やってみてください。」とNさんに言われ、フィリップは「はい。」と神妙な面持ちで蕎麦包丁を受け取りました。蕎麦の断面に包丁の刃を垂直に当て、左手で木の板を刃に寄せます。
包丁を左に傾けて板を少し押しやり、切って行きます。「僕は左利きだから、右手で切るのは難しいんだ。」とぶつぶつ言いつつ、Nさんに習った通りに左手で板を少しずつずらして、とんとんとゆっくり、ゆっくり切りました。
ある程度切ったら、蕎麦包丁の上の刃で掬って解してから、蕎麦の束を手でつかんで、他の蕎麦の束と一緒に置きます。
何度かやっているうちに、だいぶ細く切ることができるようになって来ました。Nさんと私に褒められて、かなり嬉しそうでしたよ。
蕎麦生地のおしまいの方は板が傾いて難しいので、Nさんがまた包丁を握ってくださいました。さすがにスピードが違いました。
こうしてフィリップの初めての蕎麦切り体験が終わりました。私は、学芸会で子供の演技を見守る親のような心持ちでありました。
楽しい蕎麦切りの後、Nさんのオーディオ・ルームでCDを聴かせて頂きました。持参したのは、私達が大好きなピンクフロイドの一枚です。フィリップが大昔にアメリカで買った、コレクターものだそうです。
Nさんの素晴らしい音響空間に、ピンクフロイドの演奏が響き渡りました。自宅のオーディオでは気づかなかった細かい音がリアルに聴こえ、感動的なひとときでした。
そうこうするうちに、他のお客様たちが集まって来ました。先日のワイン会に出席してくださったIさん、きのこ採り名人のIさんと奥さんのY子さん、元アナウンサーのM子さん、町内会長のYさん、初めてお会いする公民館にお勤めのKさんたちと、楽しい宴会でした。
Nさんのもつ鍋は、豆乳を使っているそうで、こくがあってとても美味しかったです。
Y子さんは、ポテトとツナを焼いたもの、アボガドとトマトの天ぷら、ごぼうのごま和え、しめ鯖など、いろいろなものを持って来てくださいました。どれも美味しくてお箸とお酒が進みました。
Nさんの赤ワインで、フィリップとM子さんの即席ワイン講座も始まりました。そのうちに即席フランス語講座も始まり、皆でフランス語の単語を使って冗談を言い合い、大笑いしました。
Iさん持参の大吟醸も飲みやすく、お猪口からお猪口へと注ぎ交わされました。
もちろん、メインの手打ち蕎麦も、しっかりとした味わいとコシで皆を魅了しました。フィリップが、太い麺をお箸でつまみ上げ、「ああ、これは僕が切った蕎麦だ。名人の切った蕎麦との違いがはっきりとわかる。」と笑っていました。
デザートには、フィリップの林檎のタルトを食べて頂きました。
こうして楽しい仲間との宴会は、遅くまで賑やかに続いたのでありました。少しずつ、地元でのお友達の輪が広がって来て、とても幸せに思います。
今日で10月も終わり・・・朝夕随分冷え込んで来ました。風邪気味なので暖かくして出かけようと思う、木曜の朝であります。
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