2022年8月15日月曜日

昔話「コアラのひょうたん売り」その1

フランス在住時代、漫画・アニメフィギュアの某日本メーカーに籍を置き、7年間ほど在宅で海外営業の仕事をしておりました。

朝はアジア市場と、昼はヨーロッパ、そして夜はアメリカと絶えずやり取りをして、かなり拘束される上、ややこしい仕事でした。しかも社長の方針や人柄が不透明だったのでやりにくく、ストレスがたまったものです。

その頃、ストレス発散のためにこの仕事について昔話風に書き、mixi 友達に読んでもらっていた「コアラのひょうたん売り」が20話程ございます。久しぶりに読み返してみたらちょっと笑えたので、少し手直しをして、このブログでご紹介させていただくことにしました。よろしければ、どうぞお付き合いください。


(写真と登場人物とは一切関係ありません)

むかしむかし、フランスのあるところに、一匹のコアラが住んでいました。 コアラは日本のタヌキに頼まれてひょうたん売りをしていました。 海のあっち側には、ひょうたんをほしいという動物がたくさんいたのでした。


フランスのネズミが言いました。 

「マダム、ひょうたん、ひとつくださいな。」 

するとコアラは残念そうに答えました。 

「あぁ、ネズミさん、すみませんが、ひょうたんは60個単位なので、ひとつでは売れません。」 


イギリスのウサギが言いました。 

「ミセス、ひょうたん、みっつくださいな。」 

するとコアラは残念そうに答えました。 

「あぁ、ウサギさん、すみませんが、ひょうたんはみっつでは売れません。」 


スペインのウシが言いました。 

「セニョーラ、60個買うからもっと安くしてくださいな。」 

するとコアラは残念そうに答えました。 

「あぁ、ウシさん、すみませんが、これ以上安くはできません。」 


ある日イタリアのトラからお手紙が届きました。 

「セニョーラ、私がひょうたんをたくさん買って、他の動物さんたちに売ってあげましょう。だからもうちょっと安くしてくださいな。」 


コアラは嬉しくなってタヌキにお願いしました。 ところがタヌキは 

「いえ、安くしてはいけません。その調子でがんばりなさい。」 の一点張り。


仕方がないのでコアラはトラにお返事を書きました。 

「トラさん、すみませんがこれ以上安くはできません。」 

するとトラは、プイッと日本のキツネのところへ行ってしまいました。 


実はタヌキと仲良しなずるがしこいキツネは、どういうわけか同じひょうたんをコアラより安く売ることができるのでした。 


それでコアラはタヌキに手紙を書きました。 

「タヌキさん、あのキツネさんの商売はどうなっているのでしょう。」 

けれどもタヌキはそ知らぬ顔で 

「コアラさん、とにかくがんばりなさい、がんばりなさいったらがんばりなさい。」 

と返事をしました。 


「では、いつまでがんばったらよいのでしょう?」とコアラが訊くと、すぐさま得意のたぬき寝入りを始めましたとさ。つづく


「すすにはたぬき寝入りは無理にゃん!」


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