2013年12月5日木曜日

頑固な土瓶

フィリップは末っ子で、彼がまだ若い頃に両親はすでに他界しています。10代に家を飛び出したので、両親から譲り受けたものはほとんどありません。それでもいくつか、家族との思い出の詰まった写真、銀のプレート、額、マリアの小像などといったものがいくつか、手元に残っています。
 
その中で私のお気に入りは、古ぼけた楕円形の木製の額です。ノルマンディに暮らしていた頃、その額が使われず、物置に無造作にしまってあったのが残念だったので、遊び半分で、私が大事にしていたものを、着物地で作って入れてみました。
 
 
そう、土瓶です。「頑固な土瓶」と名付けたこの額は、フィリップがとても気に入って、台所に飾っていました。この額に合わせて、当時作った土瓶の独り言もご紹介します。
 
「待て、待て、そりゃ何だ?紅茶の葉?ふざけんな、だめ、だめ、緑茶しか受け付けないって前に言っただろう!だめったらだめ!何?ミントティ?問題外!そんなもん入れたら、おまえに向かって吐き出してやるぞ!それで?何を飲む?緑茶?よし、よし、いいぞ、わかったんだな、そりゃいい。偉いぞ。入れろ、入れろ・・・」
 
そしてこちらが、そのモデルとなった土瓶です。母がまだ若かりし頃、清水の舞台から飛び降りる気になって買ったものだそうです。譲り受けてから、ずっと大事にしており、フランスへ一緒に渡り、一緒に無事帰って来ました。
 


ところが、最近はめっきり登場することがありませんでした。紅茶やお茶を、新入りのマシンで飲むことが多くなってしまったからです。写真中央の、ネスプレッソ社スペシャルTというティ専用マシン、これが本当に優れものなのです。10月に買って以来、毎日愛用しています。

 
カプセルを入れてボタンを押すだけで、 カップ一杯分の、とても美味しいお茶や紅茶を入れることができます。このマシンをガーっとやるたびに、「なんだそりゃ、ふざけるな!ちゃんとワシで入れろ!」という、頑固な土瓶の罵声が聞こえるようで、少し後ろめたいような気もしています。
 
あっという間に外は暗くなってしまいました。テーブルの方から聞こえて来る頑固な土瓶の愚痴に耳を傾ける、木曜日の夕方であります。
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