言葉の壁を越えて

昨晩はフィリップが、「そう言えばしばらく行っていないので、なんだっけ、あそこ、あそこの大将の顔を見に行こう。」と言い出し、八甲田へ出かけました。夕方のまだ早い時間だったので、当然一番乗りかと思いきや、お座敷の方で二人のサラリーマンがすでに盛り上がっていたのには驚きました。

行く前にフィリップは、「久しぶりだし、僕たちのことなんて忘れてしまっているかもしれないよ。」などと心配していましたが、大将は私たちのことをよく覚えていて、大歓迎してくれました。

カウンターに座って、まずはつきだし、つぶ貝のお刺身、野菜の天ぷら、揚げだし豆腐などをつまみながら生ビールを飲みました。「やっぱりここはいいなぁ。」とフィリップはご機嫌です。食べている時に大将がいろいろと話しかけてくれるので、そのたびにフィリップに通訳をして伝え、フィリップの答えをまた通訳して大将に伝え・・・となかなか忙しかったです。

大将：「そういえばさ、揚げだし豆腐が好きみたいだよね。毎回注文してるよね。」
フィリップ：「はい、大好きですが、ここのが一番美味しいです。」
大将：「どう？もう日本には慣れた？旅行と住むのじゃ大違いだもんな。」
フィリップ：「はい、慣れましたが・・・」
大将：「日本人とフランス人じゃだいぶ違うでしょ。」
フィリップ：「はい、随分違います。」
大将：「日本人はさ、内気なのよ。友達になりたいと思ってもさ、言葉がわかんないしな。」
フィリップ：「そうですね。みんなが大将みたいだといいんですけど。」

一人の常連さんが缶酒を手に現れました。そういえば、この八甲田ではお酒の持ち込みが許されているのですよ。大将がおちょこを用意しながら、カウンターに座ったその人に、「ほら、ほら、フランス人が来ているから、飲ませて、飲ませて。」と促すと、お酒を注ぎに来てくれました。菊水というアルコール19度の強烈なお酒でした。フィリップは缶酒を初めて見たので、大層面白がっていました。

次に、また別の常連さんが、ワインを2本持って現れました。

 

下北ワインだそうです。社長とお知り合いとのことで、ワインの説明をいろいろとして下さったので、フィリップに通訳して伝えていると、突然、「あれ？フランス語？じゃ、フランス人？」

そうと知ると真っ赤になって、「いやだなぁ、知らなかった、フランス人の前でワインの話なんてしちゃったよ。大将、フランス人が居るなら居ると、最初から教えてよ。」

みんなで大笑いしました。

 

 

ロゼと赤、どちらも試飲させて下さいました。ロゼはかなり甘口でした。赤も軽く、お食事と共に気軽に楽しめるように作られているようでした。それにしても、下北にワイナリーがあるとは知りませんでした。見学なども出来るようなので、是非行ってみたいと思います。

下北ワインさんのHPはこちらです：

http://www.sunmamoru.com/?mode=f3

 

目の前にビールと日本酒とワインのグラス並びました。あれこれ飲みながら、さんまのお刺身を頂きました。

 

風邪気味だったので、なんだか頭がくらくらして来ましたが、グラスは放さずに飲み続けていました。大将がお寿司を握って差し入れしてくれました。

 

そうこうしているうちに、今度は一升瓶をかかえて、別の常連さんが現れました。大将へのプレゼントだそうです。大将はまた、「ほら、ほら、じゃ、フランス人に飲ませて、飲ませて。」　

辛口なのにまろやかでとても美味しいお酒でした。

 

 

なにしろ楽しくて、席を立つのが名残惜しかったのですが、大将とカウンターに勢ぞろいした常連さんたちにお礼を言って店を出ました。

 

帰りは大将のアドバイス通り、代行さんに送ってもらいました。

 

 

 

この代行というシステムは本当に便利ですね。運転手さんによると、八戸市だけで10社ほどあるそうです。フランスでは飲酒運転による事故が多いので、この代行システムを導入できたら良いのにと思ったりします。

 

大将と愉快な常連さんたちのおかげで、とても楽しい晩となりました。言葉の壁を越えて、みなさんとフィリップの心が通い合ったようです。それでもやはり、言いたいことをすぐに伝えられないもどかしさを実感したようで、フィリップは、「日本語をもう少しがんばって勉強しようかな。」とつぶやいていました。

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