2013年8月23日金曜日

みよこさんの留袖で

ノルマンディの田舎暮らしにおいては、ぼんやりと空想に耽ったり、物語を書いたり、額やランプを作ってみたりしていました。それなりにやることは他にもあったので、そういう時間を持てたということを今では不思議に感じます。

特にランプ作りをするのが楽しく、着物地や和紙などで作り続け、家中ランプだらけでした。素人ですから大したものはできませんが、自分でいろいろ工夫して創作するのは楽しいものです。ランプのスタンドには花瓶や酒瓶などを使い、フィリップがコードや電球を取り付ける役でした。

使用する着物地は、ほとんどが母や祖母から譲り受けた端切れなどでしたが、時には「もう着ないので使ってほしい。」と、知人や友人たちから頂くこともありました。

2006年には、母の友達のみよこさんから留袖を頂きました。刺繍が華やかで美しい着物地に、はさみを入れるのには勇気が要りました。出来上がったたランプがこちらです。


このランプは「ツネ子」と名付け、次のような物語も作りました。

『むかしむかしあるところに一匹のきつねがいました。ある日、きつねは美しい芸者のツネ子に一目惚れしてしまいました。きつねは山の長者のところへ行き、人間に化ける術を教えてほしいと頼みました。長者はきつねに何週間かの特訓をし、そしてある日遂に言いました。
「素晴らしい。おまえさん、わしゃもうおまえに教えることはなにもないよ。」
「ありがとうございます、師匠。あなたのおかげです。」と若者は答えました。
「だがの、わしが言ったことを決して忘れるなかれ。おまえはずっとその姿でいるわけにはいかん。さもないとわしがおまえを罰せねばならなくなるからの。」と師匠は深刻な表情で言いました。
「ご心配はいりません、師匠。ちょっと人間の世界というものを覗きに行ってみるだけですから。」
けれども彼は一番にツネ子を口説きに行き、彼らはたちまち恋に落ちて一緒に住み始めました。

季節が変わり、一人の老人が二人の家の戸を叩きました。きつねは彼を見るなり全てを悟りましたが、後の祭り…師匠はツネ子に呪文を唱え、ツネ子は一本の灰色の木に姿を変えられてしまいました。
「あぁ、僕のツネ子…僕のせいだ、人間に恋をしてはいけなかったのに…」ときつねは泣き崩れましたが、師匠はこの沈黙の木の前で物思いにふけっていました。
「それにしても、この娘、どこかで見たような…あぁ、そうじゃ、そうじゃ、わしが教えを施した、あの可愛いきつねっこじゃ。」 おしまい』

この「ツネ子」のランプは、ノルマンディの友達のドゥニーズとミシェル夫妻の家へお嫁入りしました。以来、今でもツネ子が彼女の家のリビングルームに明かりを添えていることを、とても幸せに思います。

 
 
その後、残りの生地で「歳寒三友」という額も作ってみました。
 

 

こちらは、友達アランの60歳のお誕生日にプレゼントさせてもらいました。アランを始め、お嬢さんと息子さんもとても喜んでくださり、とても嬉しかったです。
 
 
みよこさんの思い出の留袖がフランスに渡り、形を変えて、2つのフランス家庭を見守っています。
これらのランプや額は、私にとっても分身のようなものです。フランスを遠く離れた今でも、なんだか彼らの傍に居るような気がします。
 
八戸で暮らすようになって早くも2ヶ月半が過ぎました。なんだか気分的に慌しい毎日を送っている気がします。もう少し心に余裕を持ちたいなと思ったりする朝です。
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