2013年9月6日金曜日

野生ミュールの思い出

「ミュール」と聞くと、2000年頃に流行った、かかとのないサンダルを思い浮かべてしまうかもしれませんね。靴のミュールの方はフランス語で"Mule"と綴りますが、私がこの時期思い出すのは"Mûre"と綴るブラックベリーの方です。


おそらく南の暖かい地域では、すでに7月から8月には実がなるかと思いますが、夏でも涼しいノルマンディでは、ちょっと遅れて9月頃になります。お天気の良い日を見計らって、リュックサックにお弁当とタッパーウェアを詰め込んで、野生のミュール摘みをしに出かけたものです。

ある田舎の遊歩道で、鳥たちに食べられず、誰にも摘まれていないミュールの群生を見つけました。2メートル以上に伸びる茂みに、黒く熟したミュールが数え切れない程なっているのを見て、フィリップの娘のマリオンとエマも大騒ぎでした。

ところが、ご存知の方も多いかと思いますが、この自然の恵み、ミュールはそう易々と摘めるものではありません。枝に鋭い棘があり、それに刺さると痛いわ、痒いわで、泣きたくなります。生えている場所も崖の際だったりして危険なので、摘む際には乗り出して落ちてしまわないように注意しなくてはなりません。フィリップは心配性なので、私が夢中になって摘んでいると、「気をつけて、そっちはだめだめ、こっちこっち。」などとよく言われたものです。

ある日の収穫は2㌔位でした。生で食べても甘酸っぱくてとても美味しいのですが、ジュレを作ってみたりしました。

 
 
火を通します。
 
 
ミキサーにかけます。
 

 
 
漉します。
 
 
 
こうして取れた果汁にお砂糖を入れて、再び火にかけます。
 
 
 
甘酸っぱい匂いが台所いっぱいに広がります。煮立って来たら灰汁を掬い取り、弱火にしてさらに10分程煮ます。
 
 
 
それはそれは美しい赤紫です。これをあつあつのまま、空き瓶に注ぎ込み、ぎゅっとふたをしてさかさまに置きます。殺菌効果があるのだそうです。
 
 
 
こうしてできたとろりとしたジュレは、フロマージュ・ブランやヨーグルトにたっぷりと入れたり、クレープにたらしたりして食べました。棘で傷だらけになった腕をさすりながら、自然の恵みに感謝し、大事に大事に頂いたものであります。手作りジュレのように、とろけるような思い出です。
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