2013年9月12日木曜日

金魚の思い出

先月、「フランスの犬と猫」でちょっと書いたように、フランスでのペット人気第一位は魚だそうです。友人宅にも巨大な水槽があり、数種の鮮やかな熱帯魚たちが、ゆらゆらと華麗に揺れる水草の間を忙しく泳いでいました。それに比べると大変地味なのですが、フィリップと私がノルマンディで一緒に暮らし始めた頃、小さな水槽で金魚を3匹飼っていました。

金魚たちには、「くろ」「あか」「まだら」と、見たままの、なんとも芸のない名前をつけました。でも、おかげで、フィリップの娘のマリオンとエマは、"Noir"が日本語で「くろ」、 "Rouge"が「あか」と言うことを今でも覚えているようです。この金魚たちには毎日話しかけ、随分可愛がって育てていましたが、年月が経つと共に一匹、また一匹と居なくなり、最後は「あか」だけになってしまいました。

ある日、「あか」を見ていてふと、青森ねぶた祭の「金魚ねぶた」のことを思い出しました。


ねぶた祭の山車の素晴らしさが目にチラつき、お囃子や「らっせらーらっせらー」という活気に満ちた掛け声までが聞こえて来るような気がしました。そうなるともうたまりません。

そこで作り始めたのが、金魚のランプでした。
まず、風船をふくらませて、ちぎった和紙を貼り付けて乾かしました。

 
伝統的な金魚ねぶたの方は、竹ひごでしっかりと骨格を作りますが、私の金魚はなにしろ適当です。完璧に乾いたら、飛び出している風船の結び目の下を、針でそっと突き、風船をしぼませます。そして卵型に残った和紙から、しぼんだ風船を取り出します。
 
後は口を作り、和紙のひれをつけて行きます。
 
 
 
 
ここまで、ご覧のようにとても簡単だったのですが、この後一番苦心したのは目でした。金魚ねぶたのように墨で、とも考えたのですが、どうもぴんと来ませんでした。何度か試行錯誤の末、こんな風になりました。
 

 
作り手同様、ちょっととぼけた感じです。
 


 
出来たと大喜びで、「さぁ、明かりを点してちょうだい。」とフィリップに手渡しました。フランス人は無理を言うことが多いのですが、自分が誰かに無理を言われると大騒ぎをする習性があります。フィリップもそうなのですが、しばらく放っておくと静かになって、ちゃんとやってくれます。
 
そんなわけで、無事、私の金魚に明かりが点きました。「うかつな金魚」と名づけました。
 
 
当時、このうかつな金魚ランプに合わせて作った、相当くだらない散文もご紹介してしまいます。
 
ある金魚が想像力に欠ける2匹の金魚と暮らしていた。
そのうちの一匹は鬱で、
もう一匹は便秘に苦しんでいた。
そこには会話が全くなく、
あるのは不平不満ばかり。
そこで金魚は決心した。
「いち、にの、さん、よいしょ!」
彼は水槽から迷うことなく飛び出した。

突然彼はへんな感覚に襲われた。
うん、そう、息ができない・・・
 
このうかつな金魚は何年も、とぼけた顔で私たちを見守ってくれていました。友達やお客さんたちにも人気で、譲って欲しいと言われることが何度かありましたが、どうしても手放すことができませんでした。ノルマンディからこちらへ引越しをする際、お別れをすることになりました。我がノルマンディの心の友、麗ちゃんの愛息あきらくんの元へお嫁入りさせてもらいました。可愛いあきらくんが、お部屋で使ってくれているそうで、とても嬉しいです。
 
 
暗闇に浮かぶ金魚ねぶたのように仄かな思い出です。
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