2022年8月23日火曜日

昔話「コアラのひょうたん売り」その8

「八方塞がりでどこへも行けないにゃん!すすも出張行きたいにゃん!」

年明け早々、週に渡ってひょうたん受注締め切りがありました。またもやフランスのライオンがトップであります。ヨーロッパでは他に、ベルギーのシカとイタリアのトラが、律儀に注文してくれました。次回からはドイツのシマウマも仲間入りする予定です。この不景気にありがたやであります。 


さて、フランスにはひょうたん業界で有名な大問屋スカンクが居ます。このスカンクはかつて、その規模と流通ルートを使ってひょうたんを大量に仕入れ、激安で卸していました。むちゃくちゃなことをするので、ライオンをはじめ、みんなから嫌われていました。コアラもみんなから悪口を聞いていたので、そういう悪党とは決して関わるまいと思っていました。 


ところが、アメリカのカワウソがこのスカンクチームの一人と「昔からの友達」なのだそうで、「コアラさんに是非挨拶に行ってもらいましょう。」などととんでもないことを抜かし、タヌキまで「えぇ、是非行ってもらいましょう。」と寝ぼけた相槌を打ち。そんなわけでコアラは、この鼻つまみ者たちに会いにルーアンまで行くはめに。


朝4時起きをして、早朝の列車でカンまで。ルーアン行きのおんぼろ列車に乗り換えたところ、こいつがまた、ごうごうと耳障りな音を発しながら時速30kmで進むのですからたまりません。こんな速度でルーアンまでたどり着くのだろうかと心配し始めた頃「故障のため、次の駅で停止します」というアナウンスが。 


で、本当に次の駅でびたっと止まってしまい、全員下ろされました。 

不機嫌な動物たちに「写真なんか撮ってんじゃねぇよ」という顔で睨まれたコアラ。


それから急いで階段を駆け下りて列車を乗り換え、終点リジューの駅で次の列車待ちです。 


やっと来た列車が、カンから乗ったあのおんぼろ列車だったのには腰が抜けそうになりました。どうやら故障は直ったようです。


ルーアン駅にたどり着き、スカンクのところまではタクシーで25分。着いたのは10時半ですから、時間半もかかったことになります。 


スカンクは「あなたですか、コアラさん、わたしの商売に横やりを入れているのは。」と、終始不機嫌でした。


その子分の、カワウソの「昔からの友達」は日仏ハーフだそうで、日本語、フランス語、英語が堪能でした。フランス育成だけあって、大変はっきりとした性格でした。初対面のコアラに業界話をぶちまけるので、コアラはぎょっとするやら感心するやら。さぞや顔が七変化していたことでしょう。 


そしてあろうことか、自分はカワウソの「昔からの友達」なんかでは決してないと断言するのでした。そう思われるのが大変迷惑な様で、この業界でのカワウソの評判の悪さなどを並べ立て、最後には「コアラさん、カワウソさんには要注意ですよ。タヌキさんにもそうお伝えください。」そして笑顔でルーアンの中心街まで車で送ってくれました。 


何はともあれ、コアラは任務を遂行したのでほっとしました。帰りの列車までの時間半あまりをつぶすべく、まず向かったのがプランタン。その日から始まった冬の大バーゲンで、店内は黒山の動物だかり。みんな殺気立っていましたよ。 


店内に感じの良いカフェ・レストランがあるのを見つけました。 

どれもこれも美味しそうなメニュー。迷いに迷って選んだのが、こちら、生ハムとチーズ、大好物のアーティチョークのオープン・サンド。 

お腹を満たした後は街散策。地図がないのでどこに何があるやらわからぬまま、零下のルーアンをあてどもなくうろうろ。 







いやはやコアラ、何時間もよく歩きました。最後には疲れ果て、駅のそばのカフェにへたり込み、カフェオレ杯で時間近く時間つぶし。 


やっと帰りの列車に乗り込み、終点カンで降りてシェルブールまでの乗り換え列車に乗ろうとホームへ行くと、「20分の遅れ」との表示。寒い待合場でじっと座って待っているとその表示が「40分の遅れ」になり、「60分」の遅れになり、「80分の遅れ」になり、結局時間半待ってやっと来ました。行きも帰りも、やってくれるじゃないの、フランス国鉄さんよ!


結局、往復時間半もかかったルーアン出張。読んでいるみなさんも、長すぎてさぞお疲れのことでしょう。この出張は意味があったのか、今後どう発展するのやら。翌朝急いでレポートを送りましたが、だれかさんは相変わらずたぬき寝入り。つづく


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