フィリップはトムヤンクン、私はグリーンカレーを選び、辛さにひいひい言いながらも美味しく平らげました。私のおんぼろ心臓にはこういう刺激的なものは厳禁とされているのですが、知ったこっちゃないと、医者の言うことは聞かずに好きなものを食べております。
窓側の席で、飾られている観葉植物やなにやら怪しい置物らに目を向けると、蟻たちが列になって忙しそうに歩いていました。フィリップに「きみの後ろの壁の方まで続いているよ。」と言われて慌てて椅子を引き、どこからどこまで続いているのやらと、しばらく行列を目で追っていました。
さて、蟻の行列で突然思い出したのが、2004年にフランスのカン大学に留学していた頃のことです。カン市のLa Bellevue(ラ・ベルヴュ)というホテルのスタジオを借り、外国人のための専門フランス語コースに通っていました。
当時のスタジオの写真が何枚か出て来たのでご紹介しますね。
飾り気のないスタジオでしたが、シャワーとトイレ、ミニキッチン、勉強机、小さなテーブルと椅子、ダブルベットを備え、そこそこ広くて暮らしやすい空間でした。
記録によると、家賃は605€/月(当時の為替レートで84,700円)だったようです。もっと安いアパートもあったのですが、誰にも邪魔されず、勉強に集中できるところを望んでいたのでこのスタジオに決めたのです。
快適にスタートした人生初の一人暮らしでしたが、ある日大学から戻ってみると、ベットの上を蟻が歩いているではないですか!よく見ると窓の方からずらりと行列を成していて、身震いしました。
フロントで説明すると、慌てて駆除してくれたのですが、完璧に居なくなるまでは2週間ほどすったもんだあった記憶があります。情けない話ですが、寝ている時にも、蟻が這い上がって来るのではないかと心配でうなされる程でした。まさか蟻ごときに邪魔されることになろうとは!
誰かが撮ってくれた授業中の写真もありました。
中国、韓国、台湾、タイ、ロシア、スペイン、アメリカ、ハンガリーなど、世界各国から集まった若者たちに混じって・・・私はみんなよりもふた回り近く年上でしたが、あちらでは年齢を気にする人はいないので楽しかったです。
大学では、フランス語作文・口述、フランス文明・文化・経済・法律・地理などのさまざまな学科を、全てフランス語でびっちり受講しなくてはならない上、宿題がたくさん出ました。週末になると洗濯物と宿題をカバンに詰め込んで、フィリップが待つシェルブールのアパートに戻り、宿題を手伝ってもらったものです。たった4ヶ月間でしたが、私の人生で一番真剣に勉強した時期です。
蟻の行列に蘇ったフランス短期留学の懐かしい記憶を辿る、木曜日の朝であります。
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