れいりんはシェルブールの町で、夫婦でバレエ学校を経営しているバレエ・ダンサーです。旦那さんのサミュエルもバレエ・ダンサーで、振り付けもします。れいりんはさすがにダンサーだけあって、いつも背筋がしゃっきりと伸びていて素敵なのですが、ちょっと天然ボケなところもあり、とても可愛いマダムです。そんなれいりんが、サミュエル、愛娘まるちゃん、愛猫と暮らす暖かな家庭に、私達の蘭たちが居心地良く暮らしていることを知り、とても嬉しくなりました。
私もフィリップも蘭の花が好きなので、ノルマンディに暮らしていた頃、いろいろな蘭を育てていました。蘭の花は、種類によって育て方が難しく、育て方のマニュアルにもいろいろと注意点が書かれていますよね。私はめんどうくさがりなので、そういうものはめったに読まず、毎週日曜日の水遣り、思い出した時に肥料、気が向いたら植え替えといった具合でした。そんなわけなので、可哀相にあっという間に枯れてしまった鉢や、いつまでたっても二度目の花を咲かせてくれない鉢がありました。それでも、何鉢かは毎年綺麗な花を披露し、私達の目を楽しませてくれていました。
蘭と言えば、着物地と和紙を組み合わせて作った「美の秘訣」という額を思い出します。
以前このブログでもご紹介したように、ノルマンディ時代、日本を恋しく想いながら、自宅で気の向くままに作っていた下手の横好きアートもどきのひとつです。当時、一年ぶりに咲いた実際の蘭の女王と、後ろに飾った額の中の胡蝶蘭との会話を想像して、散文にしたものがあります。なぜこの額を「美の秘訣」と名付けたかおわかり頂けると思うので、恥ずかしながらご紹介します。
『ファラオノプシス、蘭の女王は一年ぶりに花を咲かせた。
彼女は誇らしげに胡蝶蘭を振り返って言った。
「あら、あなた新入りね。とにかくそこに居てくれてありがとう。
わたくしの美をより一層引き立ててくれて。」
そして女王はため息をつき、
「私の召使はどこかしら。 喉が渇いて死にそうだわ・・・
ここは陽が当たり過ぎるのよ!」 と不平を言った。
胡蝶蘭は面白がって、
「私は・・・大丈夫。喉が渇いたことがないんです。」
すると女王は目をまんまるに見開き、「なんですって?!」
胡蝶蘭は、「実のところ、 わたしは水なしで生きられるんです。」と小声で言った。
女王は、「ほんとうに?!」とあんぐりと口を開け、それから胡蝶蘭をしげしげと眺め、
「でもどうやってその美しさを保っているの?
何の肥料を使っているのか、どうぞ教えてちょうだい。」と言った。
すると胡蝶蘭は、「わたしには水も肥料も必要ないんです。」と控えめに言った。
女王は今にも泣き出しそうになり、
「それじゃ、いったい何なの、美しさの秘訣は?
お願いだから教えてちょうだい。」 と懇願した。
胡蝶蘭は、「申し訳ありません。
生まれつきこうなので、何の秘密もないんです。」と慎ましやかに応えた。
その日以来、ファラオノプシスは胡蝶蘭に話しかけるのをやめ、
いつも心持ちうなだれている。』
この92x73cmの大きな額は、知人のミッシェルとジャン・ピエール夫妻が気に入って買って下さり、ボルドーの別宅に飾ってくれました。
現在の自宅には、蘭の鉢がひとつあります。母がフィリップにと買ってプレゼントしてくれたものなのですが、場所が変わったのが嫌だったのか、あっという間に枯れてしまいました。それでも葉は生き生きとしているので、いつの日にか、機嫌を直してまた咲いてくれるかもしれません。
台風の接近による暴風雨に震えながら、シェルブールも雨だろうかとノルマンディを懐かしむ朝であります。
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